I Want To Eat You!





 食べちゃいたい、とわたしは言った。
 かまわないよ、と彼は答えた。食べたければどうぞ、後悔すると思うけれど。
 ためしにその首にかみついてみた。ひくりと震えたけれどそれだけだった。細くて肉がうすい。皮はやわらかく歯でたやすく引き裂けた。汗のにおい。ちのあじ。なんて、甘い。
 もうすこし、深く。歯を染み込ませるようにゆっくりと刺してゆく。

「ん、」

 ほんのちょっとの抵抗。軽くおさえたらすぐに止んだ。安心して、また深く。ちのにおいが濃くなる。ぷるぷるした皮の裏側がめくれて舌にふれる。やわらかい肉。甘い味。ぶつり。かけそい音がして、彼から肉がはがれた。
 首からとうとうと血を流しながら、彼はすこしだけまつ毛を揺らし、ほう、とため息をこぼす。それを横目で見ながら、わたしはくちゃくちゃ口の中で彼の肉をなぶった。

「……、どうかな?」

 そう聞く彼が珍しく機嫌がよさそうに見えて、私は何故だか腹が立った。ごくんと彼の血肉のかけらを飲み込んでやる。

「おいしいわ」
「そう」
「だけどつまらない」
「だろうね」

 彼はゆるく微笑むと、欠けた部分の肉を修復しはじめる。神経のひとつひとつをつなぐ、ひどく繊細な、けれどかんたんな作業。数十秒で真新しい肉が復元されて、みるみるうちに皮膚がそこを覆った。これでぜんぶもとどおり。

「あなたを食べてもあなたはちっとも損なわれない。つまらないわ」
「痛かったよ」
「うそつき」
「うん」

 なんて男だろう。こんなやつ大嫌い。その首締めてやるから。
 胸のうちだけで叫んで、私は彼のほんのすこし色が違う肌を撫でた。ほんとにひどい男。殺したいくらい憎い男。食べちゃいたいくらい嫌な男!




「……あなたの骨を食べたらどんな味がするのかしら」
「……食べる?」
「最低」










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 たぬきじじい。
 ロックとエーリカっていわないとよくわからない話だなあ。